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完全自己満足のページ

2024

0427
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2009

0926
アカデミー入学前のアキト→ユメ小説。
アキトが悶々としているだけの話です。
小説は続きからどうぞ。



【宵闇に花は溶け】



「アキト、ほら、たこ焼き!おいしそうだよー!あ、でもポテトフライも捨てがたいなぁ。どうしよう」
「・・・」

はしゃいだ様子であちこちと視線を移すユメの後ろを、3歩ほどの距離をあけてついていく。結い上げた髪にさされたかんざしの飾りが、ユメが動くたびにしゃらしゃらと音を立てて揺れているのをぼんやりと眺める。

「ねぇねぇ、アキトはどっちがいい?」
「どっちでも」

振り返ったユメから視線をそらして、自分でも冷たいと思うような声で返すと、ユメは一瞬顔を曇らせた後、

「じゃあ両方買っちゃおうかな!」

と明るい声を出して、屋台へと向かう。
その笑顔と声が、必死で繕ったものだというのがわかっていたから、胸がずんと重苦しくなる。
最近の自分はユメに冷たい。ユメ自身にも、母さんにも指摘されたし、自分でも自覚している。だけど、どうしようもないんだ。

「ほら、アキト。おいしそうだよ!」

満面の笑みでたこ焼きを差し出す笑顔。
純粋なそれに、同じように笑顔を返すことが難しくなったのはいつからだったのだろう。
弟、としてしか自分を見ていないユメに、屋根裏で見つけてしまった事実を伝えたら、どんな顔をするだろう。
時折、そんな残酷な想像が自分の脳裏をよぎることなど、ユメは考えもしないだろう。
姉弟じゃなければ、弟でなければ。
そう密かに願っていたことが現実になったのに、アキトを取り巻く環境はなにも好転してはいなかった。いや、余計に悪化したかもしれない。
自分を抑えるための枷がなくなって、いつ自分がユメを傷つけるか、それが、いつも怖い。何度もそんな夢を見て、今度こそそれが現実になるような気がして。

離れなくては。
そればかりが、頭を占めるのに。

白い項。
揺れるかんざし。
細い手首。
柔らかな皮膚。
大きな瞳。

どうして知ってしまったのだろう。
気づいてしまったら、もう。

 


「はしゃぎすぎて転んで捻挫、なんていくつのガキだよ」
「・・・・・・」

足を捻ったユメを背負って歩く。
最初は肩を借りれれば歩ける、と豪語していたのを、無理矢理アキトが背負ったのだ。足首は赤くはれ上がり、とても歩ける状態ではなかった。年上、というのをいつも掲げているユメにとっては、手痛い失敗だったのだろう、さすがに気まずい思いをしているらしく、ユメはむっつりと黙ったまま背負われている。
からから、とゲタと石畳が擦れた音を立てる。

「・・・何かしゃべれよ」
「・・・・・・」

背中のやわらかい感触や、甘いにおいからなんとか意識をそらしたくて声をかけると、返って来たのは安らかな吐息。
ひょっとして、と思い、軽くユメを背負いなおすように揺らしてみるが、規則的な吐息は変わらず。

「まじかよ・・・」

おそらくは祭りの途中で出された甘酒だろう。
酒の得意でないアキトは手にもとらなかったが、ユメはすすめられるまま口にしていた。とはいっても、精々コップ一杯だ。少々テンションが高くなったかな、とは思ったものの、気まずい雰囲気をどうにかしたいというから元気だと思っていた。
ひょっとして、こけたのも甘酒のせいか。
原因がわかったとしても、状況は変わらない。
いや、ユメが寝てしまったことで、状況は悪化してしまった。


ユメを女だと意識したのはいつからだろう。
周りから、似ていないと揶揄されたときか。
アキトの背がユメの背を越した時か。

確かなのは、血の繋がりがないと知る前だということ。


ぴーひゃら、ぴーひゃら。


祭囃子の音が遠くなる。
縁もたけなわの時間、会場から少し離れたこの場所に、人通りはほとんどない。
背中と掌からつたわる柔らかい皮膚の感触。首筋にそそがれる甘い息。

自然と足が止まる。
頭の中で警鐘がなる。

駄目だ、駄目だ。
そうしてしまったら、もう家族には戻れない。
血の繋がりはなくとも、ユメが家族を願うかぎり、この想いは禁忌だ。


だけど、掌から伝わる感触は、吐息は、脳髄から俺を溶かしていくようで。

 

祭囃子はもう、遠い。
横たわる闇だけがアキトとユメを包んでいた。




==============
まぁ、アキトのことなので、真っ直ぐ帰ったに決まっていますが。
多分アマツでは周りもみんなアキトとユメを姉弟だと思っているので、いろいろアキト的にはきつそうです。
 

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