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完全自己満足のページ

2024

0420
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2010

0806

お題はいつもお世話になっております、TVさまからお借りしました。

君に贈る7つの動揺

1 報われずとも幸せですか
2 知らないふりを続けられますか
3 すべてをさらけ出せますか
4 甘い憧憬を棄てられますか
5 どうして断定を避けるのですか
6 抑制されたそれは 果たして感情と呼べるものですか
7 本当に答えはひとつですか

ストームラバー・夏色のモノローグ・華やか哉我が一族の3本で7題クリアが当面の目標です。

相変わらず暗くて重く、悠人が救われませんが、それでもOKという方は続きからどうぞ。
(ネタバレ注意)



===============================
 

「生徒会長はすごいね~」

やたら間延びした独特のテンポで刻まれた言葉。
振り返らずともだれがそこにいるのかは分かったが、その言葉の意味が分からず振り返る。

「どういう意味だ、巳城」

その先には予想通りの顔が、楽しげに笑みを浮かべている。
名の通り蛇を連想させるその笑みに、悠人はそうと気づかれない程度に眉をしかめた。
そんな悠人の様子をあざ笑うかのように、タクミは一層口角を吊り上げ笑う。

「べ~つ~にぃ。黙って見てるだけなんて、俺には耐えられないなぁ~、と思っただけだよ」
「…何が言いたい」

一瞬で腸が煮えくり返った。
黙れ、と怒鳴りたいのを抑え込んだのは、幼少期から叩き込まれた卯都木家の教育の賜物だ。
けれど、タクミは一瞬言葉に詰まった悠人の姿を見逃さず、その瞳を楽しげに歪ませる。
薄い茶の瞳が、日が当たり金色に光る。

あぁ、あいつの瞳に似ている。
俺に、どうしようもない劣等感を抱かせるあいつの目の色に。

 


【抑制されたそれは 果たして感情と呼べるものですか】

 


最近よく夢を見る。
恋い焦がれる彼女が、俺をみて笑い、俺の腕の中にいる夢だ。
何度も同じような夢を見るものだから、最近はもう夢だとわかってしまう。
悠人先輩、と笑う彼女は現実と遜色ないほど美しいのに、朝になれば淡く消えてしまうのだ。

「黙って見てるだけなんて、俺には耐えられないなぁ~」

先日言われた巳城の言葉が蘇る。
黙ってなんて、そんなことできなかった。
恭介と付き合っているのを知っていながら、彼女が俺に笑顔を向けてくれるのに一縷の望みを託して告げたあの日。
すぅっ、と彼女の顔色が変わるのを見て、俺は自分がミスを犯したのを知った。

手に入らないものなんか、今までなかった。
卯都木家に生まれ、悠人が望まずとも大抵のものは手に入った。勉強や運動も少し努力すれば、人並み以上にこなせた。
優れている他人がいることは認めていたが、それでも自分が努力すればその上にいけるものだと、なんの根拠もなくそう思っていた。
けれど彼女は言った。
悠人を望むようには見れないと。
恭介を好きだから、ではない。悠人ではダメだ、と。そう言ったのだ。
身が切り裂かれるような痛みというのを初めて感じた。泣き叫んで崩れ落ちそうになる自分に愕然とした。
かろうじて笑みを浮かべ、負け惜しみのような強気なセリフを吐いたのは、なんてことはない自分の高すぎるプライドだ。
恭介であれば。
彼女の愛するアイツであれば、きっと悠人と同じ立場で同じセリフを吐いたとしても、それはきっと彼女に負担をかけない心遣いからくるのだろう。
その瞬間、悟ってしまった。


俺は、恭介にはなれない。
彼女の愛する、アイツのようにはなれない。

 

「なぁ、悠人。最近、お前とアイツ変じゃねぇ?なんか喧嘩でもしたのか?」

放課後の生徒会室。
ほかの生徒会役員がすべて帰ったのを見計らったかのようなタイミングで、恭介が口を開く。
いや、実際タイミングを計っていたのだろう。作業の間中、恭介がちらちらとこちらを窺っていたのはわかっていた。
彼女にフラれてから1週間。悠人は露骨に彼女を避けていた。
全くもって情けない話ではあるが、口を開けば何を言い出すかわからなかったからだ。自制できないほどの感情は初めてで、どう対応していいのかわからない。
彼女に悲しい顔をさせるのは心が痛んだが、それでもどこかで喜びを感じたのも事実だ。
彼女の中に、少しでも自分の存在があるのだと実感できるから。
こんな歪んだ感情はきっと心配そうにこちらを窺うこの男は持ちえないのだろう。
ちくり、と胸を刺す劣等感。それを覆い隠して、悠人はいつも通りの表情をつくる。

「別にそんなことはないさ。お前の気のせいじゃないのか」
「そうか…?なら、いいけどさ。何かあったんなら力貸すから言えよな」

それならば。

お前の皮を。
お前の血を。
お前の不器用だが暖かい心を。

彼女がお前を愛する要素となるものを、俺にくれよ。


全てが手に入ると思ってた。
努力すれば叶わないものなどないと思っていた。
だけど、今、喉から手が出るほど欲するものだけ手に入らない。

俺が俺である故に。
恭介が恭介である故に。
彼女が彼女である故に。

彼女は恭介しか欲しがらない。


夕暮れが校庭を赤く染めていく。
じわりじわり、と夜の闇が忍び寄る。


「あぁ。何かあったらな」


口には出さない。
今は、まだ。

 

 

=========================
行き過ぎた感情は狂気。
もちろんゲームはこんなに暗い話じゃございません。
主人公が彼氏がいるときに告白を断るのに、「彼氏が好きだから」というのではなく「あなたのことはそんなふうに見れません」とばっさりいくのにびっくりしてできました。

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