2009
ある程度書きたい欲求が収まってきて、なんだか少し間が空きがちになってきてしまっています。
小説はシン+オリキャラとアキが欠片も出てこないというあるまじきお話。
しかも現代設定なので、シンじゃなくてもいいんじゃない?みたいな。けれど、この話が浮かんだ時、もうシンしか浮かばなかったんです。
もともと王道から大きく道を外れた話ばかりの我がサイト。こういうのもアリかなと。
次はアキが出てくる話にします(一応反省はしている)
今考えているのはアクト×アキ(付き合っている設定)でアキ+シン+チナキ(現代)。
あと現代設定で一番ツボだったアキ×タカミはせめて1本は書きたいと思っています。
ネタがあるのはその2本なんですが、お題だけでもあと9本・・・。書ききれるのかあたし・・・。
自己満足につきあってやってもいいか~という、心優しい方は続きからどうぞ。
「あらやだ。ひょっとしてシン?」
そう声をかけられた時。
本当に一瞬誰だか分からずに呆けてしまったのは。
【色好みか貴方好みか】
店の食材の買い付けを済ませた午後。遅い昼食をとるために、シンがくぐったのは蕎麦屋の暖簾。
自分で作る時は、手軽さからパスタなどが多くなりがちだけれど、シンは和食派だった。外食ではつい和食や蕎麦屋を探してしまう。
なんどか買い付けに訪れている街だったので、行き着けの和食屋もあったのだけれど、運悪く定休日。
一本奥の通りを覗いた所で、藍色の暖簾を発見したのだ。
何を食べようか、と考えながら扉を開けると、威勢のいい声に迎えられた。ぱたぱたと店の奥から、紺の作務衣を身につけた従業員がこちらに笑顔を向けて口を開こうとし、そのまま『あ』という形で固まった。
そして、冒頭の台詞につながる。
「いやぁ、まさかお前がこの店で働いてるとはね。縁って不思議だねぇ」
従業員の女は、シンの元彼女という関係だった。
別れたのはもう2年も前になるか。
あの頃のシンは(今でもそう変わらないが)、女性とあまり真剣に付き合っていなかった。イベントやメールはまめにこなすものの、のめりこむという感覚はなかった。
美しく着飾った女をつれて歩くのは、自慢になるし楽しい。
『まるであたしはあなたのアクセサリーの一部』
昔の女がそう評したときは、思わず上手いたとえだと思ってしまった。
見栄えがして、それなりに楽しい時間を過ごせればいい。そんなシンの彼女には、同じような考えの女が自然と並んでいた。本気になると面倒だ、とシンが相手を慎重に選んでいたせいもあるし、女達はシンの表面的な優しさをすぐに見抜いて見せた。
「他に好きな人ができたの」
彼女がそう言った時も、シンはそう驚かなかった。
いい加減な関係はいつしか破綻が必ず訪れる。シンの元を同じ台詞を告げて去った女は多かった。
キャリアウーマンの彼女は、ブランド物のスーツを隙なく着こなし、磨きこまれた美しい爪を光らせながらコーヒーを飲んだ。まるで、一連の絵のような動作を見ながら、同じようにシンはひとくちコーヒーを飲む。
どうして、などとは聞かない。明らかな愚問だ。
代わりにどんな人?と尋ねると、彼女は美しく紅が引かれた唇を少しだけ持ち上げた。
「あなたとは全然違う人。野暮ったいし、お洒落な場所なんかひとつも知らない。趣味だってちっとも合わないわ」
だけどね、と彼女は続けた。
「あたしを愛してくれる人」
そう、とシンは頷いた。
幸せに、などとは言わない。言う間でもなく彼女は幸せになるのだろう。
その後風の噂で結婚したと聞き、きっと二度と会うことはないんじゃないだろうか、と思っていた彼女は、あの頃とは違う表情で笑っている。
声をかけられた時、すぐにわからなかったのは、思い出の中の彼女とは大分変わっていたからだ。
手入れを怠らなかった美しい髪は、今はひとつに無造作に結ばれ、丹念に行われていた化粧は彼女の顔を覆ってはおらず、自慢の爪はきれいに切られ、その手にはアカギレさえ見える。
それでも、シンは『幸せか?』とは聞かなかった。
晴れやかな笑顔が、何よりの答えだったから。
「綺麗になったね」
お世辞が上手いんだから、と照れくさそうに彼女が笑う。
こんな格好で綺麗も何もないでしょう、と。
「本当だよ。綺麗になった」
心から、そう思う。
艶やかだったあの頃よりも。
愛し愛され、愛する人のために働く君が、ずっとずっと美しい。
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誰かのために自分を変えられるのは、きっととても美しい。
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主人公至上主義でつっぱしります。
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