2009
小説書くのがちょっと久々だったのと、桜庭君のキャラが掴みきれていない感じです。最後まで風野くんにしようか迷いながら書いたという。
一応TRUE ED後のイメージです。
短いし、やや暗いテイストの話です。
それでもOKという方は続きからどうぞ。
手を繋ぐたびに思う。
薄くて、軽くて、華奢な手だ、と。
【掌に祈りを】
「ぼーっとしてどうしたの?」
一緒に歩く帰り道。
覗き込んできた丸い瞳に、どきりと跳ねる心臓をごまかすようになんでもないと首をふる。
そう?と一応頷いたものの、美雪の目にはどこか心配そうな色が浮かんでいる。せっかく一緒にいれるのに、そんな顔はさせたくない。
笑顔を浮かべてたわいない話題をふると、美雪はいつもの穏やかな笑みを浮かべて頷いてくれる。
その顔が好きだ、と思う。
顔だけじゃなくて、声も、髪も、つながれた掌の温度でさえも好きだと思う。
「もうすぐ秋だね」
話題が途切れた瞬間に、美雪が息を吐くようにぽつりと呟いた。
あの悪夢のような秋の夜から、2年の時が経っていた。あれほどセンセーショナルに取り上げられた事件も、いまや世間では忘れ去られたかのように誰も口にしない。けれど、自分も彼女も恐らく一生忘れられはしない。それは、あそこでときを過ごしたメンバー全てがそうだろう。
秋が来るたびに思い出す。
あの背筋が凍るような恐怖と、燃え滾るような怒りと、彼女の暖かさに泣きたくなるほど安堵した想いと。
それはばらばらの感情だけれど、あの夜を思い出すときには、ぐちゃぐちゃと一塊になって克己を襲う。頭の中では終わったことだとわかっているのに、それでも心をかき乱される。
いつか、思い出話として語れる日がくるのだろうか。怒りも、恐怖も遠い過去のものと割り切って。
ちらり、と隣を見ると、あの頃よりも大分伸びた髪をなびかせた彼女が、どこか遠いところを見つめている。
つながれた掌を見つめる。
薄くて、軽くて、華奢な手。
だけど、この手に救われた。
自分だけじゃない。あの時あの場所にいた全てが、彼女のこの手に救われた。
時々この手が自分の手とつながれているのを奇跡のように思う。
綺麗な、華奢な、花みたいな掌。
だけど、太くて骨ばった自分よりも強い力を持ったその掌。
少し、――痛くないよう細心の注意を払って力をこめると、応えるように細い指が握り返してくれる。
この掌に祈りを。
これが、永遠の奇跡であるように。
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桜庭君好きなのに・・・。
難産でした・・・。
暗闇のなかで君を待つ小説は本数が増えればカテゴリーに加えたいと思います。
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主人公至上主義でつっぱしります。
妄想癖はありますが、発想が貧困なのでリクエストいただければ嬉しいです。(リクエストや感想は拍手やコメントでお願いします)
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