2008
なんだかもうすぐ1000を越しそうな勢いで、大変恐縮しております。キリ番欲しい方がいるか分かりませんが、とりあえず1000番単位で設定させていただきたいと思います。もちろんスルーもOKで。
リクエストをコメントや拍手でいただければ、できる範囲でお応えしていきたいと思っています。
残すお題もあとひとつ!というところまでまいりました。
今回はカヤナとアキのお話、とは言ってもカヤナ×クラト←アキテイストのお話で、アキが鬱はいっていますので、いつもどおり注意警報を。
「荊、ふみしめて」と同設定という影設定がありますが、別々でも全然読めます。
頭にこの話が浮かんだ時には「よし!」と思ったのに、書いてみるとなんだか微妙なよくわからない話になってしまった気がします。雰囲気だけでも伝われば御の字という低い志。
それでもいいよ、と心の広い方のみ続きからどうぞ。
【致死量のキス】
「こうして一緒のベッドで寝るのも久しぶりだね」
「そうだな。ヤスナに着てからは、別の場所での生活だったからな」
ひとつのシングルベッドで身を寄せ合い、くすくすと笑う。
タカマハラにいたときは、ひとつの体だったふたりが分かたれて数ヶ月。ヤスナで牢を出てからは、監視の問題ということで、アキとカヤナは別の場所で生活をしていた。
アキひとりでは到底ヤスナから逃げるなどという芸当はできないが、カヤナであれば可能性がある。ただし、カヤナはアキを置いて逃げはしない、というのがヤスナ軍上層部の見解だった。カヤナが仮に逃亡しても、アキを抑えておけば、必ずカヤナが現れる。そのためふたりは時折会うことはできるものの、基本的な生活は別だ。もともとひとつの体を共有していたふたりが、今は敵国の中でばらばら。牢から出してもらい、こうして鍛冶の仕事ができるだけありがたいとは思うものの、それでもアキはさびしいし不安だった。
「タカマハラの軍ってどこまで来たんだろうね」
「さぁ。でもかなり迫っているんだろうな。こうして監視の人数を制限するほど、兵力の補充にまわしているということは」
今回カヤナとアキが一緒にいられることになったのは、タカマハラがヤスナに侵攻してきたということで、監視の人員がそちらに割かれたからだ。とは言っても、そう簡単に逃げられる体制ではない、というのがカヤナの見解だった。部屋の中まではさすがにいないが、1階には親衛隊の者が1人、家の周りにも逃亡経路を考えつくされた配置で人員が置かれている。
足をひっぱっているな、と思う。ごめんね、と言いたい気持ちを抑えてアキは「カヤナ」と声をかけた。
「ん?なんだ?」
「皆、元気かな」
「皆、とは?」
カヤナの胸元に顔を寄せるように俯き、表情が見えないようにする。
甘えた仕草に見えたのだろう。カヤナはくすぐったそうに微笑んで、優しい手つきでアキの髪をそっと撫でた。
「皆だよ。おじいちゃんに、シンさん、ウキツさん、ミトシくん、隊長さんにクラトさん、王様に・・・。タカマハラの皆。セッちゃんは元気そうだけど」
「大丈夫だ。もうすぐきっと会える」
「カヤナはクラトさんに一番会いたいんでしょ?」
「な、何を言ってるんだ!?そんなわけはないだろう!?」
からかいの言葉に顔を赤くするカヤナを可愛いと思うと同時に、心のどこかがボロボロと崩れていく。
なんだか泣きたくなる気持ちを堪えて、アキは笑った。
「カヤナ、可愛い」
「アキ!からかうな!」
「からかってなんかいないよ。あたしが男だったら、カヤナを絶対幸せにするのにな。クラトさんやイズサミからも奪っちゃうの」
ふふ、と微笑むアキに、カヤナは困ったような笑みを返して、なだめるようにアキの髪をすく。
ずっと剣を握ってきたその掌は皮が硬くなっていて、女の掌じゃないな、といつかカヤナは苦笑していたけれど、優しい指先は慈愛にみちた女の手そのものだ。その手はもちろん、誰にでも真っ直ぐ向かうその姿勢も、どこか子供っぽいところも。本当に大好きなのに。
―カヤナ!―
あの人が呼ぶその声が、リフレインのように頭に響く。そのたびに絶望感が降り積もる。
あたしはカヤナにはなれない。あの人―クラトの目線の先にはいられない。とうに分かっているのに、もう諦めてしまいたいと、投げ出してしまいたいと、ずっとそう思っているのに。
「カヤナ、大好き」
自分の中の醜い気持ちをごまかすように、美しいと思えるように笑顔をつくる。
好きなのは本当。嘘じゃない。だけど、もうそれだけじゃいられなくて。
消して欲しい。この醜い想いを。じりじりと広がっていく、嫉妬という名のそれが自分を覆いつくしてしまう前に。
神様、どうかあたしに慈悲を。
致死量のキスを。
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醜いこの感情が消えないなら、いっそ殺して。
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主人公至上主義でつっぱしります。
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